フローズン・リバー』観てきた。強烈な映画だった。
雪と氷の荒涼とした風景のなかに描かれる、みずぼらしいアメリカ白人の貧困層、原住民の居留地、カナダ国境、密入国しようとする中国人とパキスタン人。観終わってみると、かなりかなり異質な人々たちが文字通り「国境をこえる」映画だったなと思う。舞台はニューヨーク州でも、マンハッタンのアーバン・シティライフで、同質な人々だけで完結する(たとえばウディ・アレンみたいな)映画とはいちばん対極にある。
その異質な人々が文字通り渡るのが、北アメリカの先住民モホーク族居留地と、カナダ国境の「凍った河」。そもそもこの居留地というのが、一種の自治権をもっていて、独特の法と慣習をもった「異国」である。
その中の「フローズン・リバー」はちょうど異世界への架け橋みたいになっていて、向こう岸に行くことは法の一線を越えにいくこと(違法入国者を車のトランクに詰めて帰ってくること)であり、異質な、言葉も通じない人たちに新しい土地での生を授けること(トランクに入って河をわたるのは出産のアナロジーのよう)であり、2人の母親が過去の過ちを埋め合わせに行くことでもある。だから、荒涼と広がる、いつ割れるかもわからない「フローズン・リバー」の上を車が走り出すシーンは、この映画そのものなんだと思う。

ところでこの車の名前なんだっけ。「深緑の―」って何回かセリフに出てたんだけど思い出せない。