まえがき――よい社会ってどんな社会
序 章 幸福や平等や自由をどう考えたらいいか
人々の幸せを論じる難しさ/ミルの考え/「自由」と「分配」の衝突/「競争」の本当の意義/本書は、幸福の問題を、数学を使って考える/ブラウン神父から学ぶこと/数学の有効性を知る一例
第1章 幸福をどう考えるか――ピグーの理論
「幸福」を経済学ではどう考えるか/「幸福」は「効用」で測る/効用関数はこのように発見された/大事なのは、「最後の1単位」が与える効用/ピグー厚生経済学/「最良の社会」は「完全平等の社会」である――ベンサムピグーの定理/ベンサムピグーの定理をどう評価するか/ピグーの論理の弱点/功利主義とはどんな主義か
第2章 公平をどう考えるか――ハルサーニの定理
人が完全に公平であるのはいつの時点か/ハルサーニの人となり/賭けについての数学者の基準/賭けについて、経済学者が導入した期待効用基準/期待効用はアンケートでわかる/期待効用基準を生み出す規則とは?/ハルサーニの発想/ベンサムピグーの定理が再現される/人間の幸せについての幾何学/ダイアモンドの強烈な批判/自由意志の行使の問題
第3章 自由をどう考えるか――センの理論
自由という魔物/民主主義と自由は両立しない/社会の選択基準を与える関数/パレート原理とリベラリズム原理/センの鮮やかな証明/原体験としてのベンガル飢饉/どんな選択肢から選ばれたのか/学校教育は義務か権利か/選択肢の広さこそが「自由」/障害者について深く考える/潜在能力アプローチ/潜在能力の国際比較
第4章 平等をどう考えるか――ギルボアの理論
平等と格差/平等度の計測/ジニ係数で世界と日本の不平等を見てみる/ジニ係数のいろいろな計算方法/ジニ係数で数学の威力を見る/ジニ係数の意味での平等社会を選好するとは?/公理をチェックしてみる/やはり、背後には不確実性についての認識/「自信のなさ」が関わる確率理論/別の期待値を定義する/ショケ期待値の公理系/ジニ係数とショケ期待値には深いつながりがある
第5章 正義をどう考えるか――ロールズの理論
公正な社会とは何だろう/正義の二原理/功利主義はどこがダメか/最も不遇な人たちとは誰か/原初状態と無知のヴェール/基本財を使ってマックスミン原理を論証する/センによるマックスミン原理への批判/マックスミン原理の公理化の問題/「自信のなさ」の不確実性理論を再び/公平無私の観察者によるマックスミン原理/マックスミン基準と不透明な未来
第6章 市場社会の安定をどう考えるか――ケインズの貨幣理論
資本主義の落とし穴/「欲望」と「安定」のトレードオフケインズの豊かなアイデアケインズ理論における「不確実性」/再び、加法性を要請しない確率/貨幣こそが不況の原因/貨幣が購買力を吸収し尽くす/月への欲望/流動性選好が不況の元凶/「二股をかけていたい」という欲望/「曖昧な消費欲」を公理でとらえられる/不況とは協力が壊れてしまった状態/経済学の新たな地平へ
終 章 何が、幸福や平等や自由を阻むのか――社会統合と階級の固着性
幸福や平等や自由の実現を阻むもの/学校教育と平等/教育を投資と見る人的資本理論/階級は教育によって固着化される/対応原理とヒエラルキー分業/数学モデルの重要性を再論する/アカロフの「情報の非対称性理論」/忠誠心フィルター/貧乏人はなぜ金持ちに忠誠心を持つのか/階級に対する「経験」の影響
あとがき
参考文献

おもしろかった。6章以外は。ショケ期待値すごい。
タイトルは完全に釣りで(やっぱり「使える!」とか入れないと売れないんだろうなー)、中身は厚生経済学とか、一昔前に規範経済学って言われてた分野とか、意思決定理論とかをわかりやすく説明した本。とくにセンの解説はすごくわかりやすい。
6章はいらないので、代わりに5章の延長でハーサニのロールズ批判とか入れてトピックを展開してくれたらよかったのに。