The Bottom Billion

最底辺の10億人

最底辺の10億人

開発経済学―貧困削減へのアプローチ

開発経済学―貧困削減へのアプローチ

ポール・コリアー『最底辺の10億人―最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?』。たいへん勉強になりますた。訳がところどころ変だけど。(「ブッシュの中にある司令部には若者たちが集まって志願を申し出る」[pp.51-52]ってルー語?)
10章のNGO批判が強烈。開発関係の人は相当怒ってるんだろうな。挙げられてるのは、クリスチャン・エイドの無理解にもとづいた反自由貿易キャンペーンの例。このキャンペーンに学問的権威を与えてるのがロンドン大学のSOASの人らしいんだけど、むかし読まされましたよSOASの人が編集した似たような本。ピグー効果がなぜかケインジアンによって提唱されたことになっていたりと、たいへんめまいのする本でした。キャンペーン用に書かれた論文の内容も推して知るべし。
2003年に出版された開発経済学の教科書だと、「大きな方向転換」があるらしいのだけれども、大勢はまだそうでもないんだろう。

英国を中心とし、世界的に活動を広げているNGOのOxfamは2002年にレポートを発表し、その中で、グローバリゼーションは途上国を豊かにする潜在力を秘めているが、それが実現しないのは農業や繊維産業といった、途上国が比較優位をもつ傾向にある産業の生産品に対し、先進国が貿易政策を採っているからだ、と主張している。これは、それまで多くのNGOが、発展途上国における労働条件の悪さや児童労働の存在等々を理由として、グローバリゼーション自体に反対していたことを想起すると、大きな方向転換ということができる。[黒崎・山形『開発経済学―貧困削減へのアプローチ』p.203]